クールな同期と熱愛はじめ
あまりにも興奮していたからか、部長は私を応接室へと引き入れた。
「まずは落ち着け」
これが落ち着いてなんかいられるものか。
桜木くんは私のせいにはしていないけれど、元をただせば私の行動が招いた事態だ。
「高梨氏側の弁護士から示談の話がきたんだ。その条件の中に、桜木が職を辞することが盛り込まれていた」
「そんな!」
あまりにも横暴だ。
そもそも彼は、暴力を奮ってなんかいない。ただ壁に押し付けただけ。それだけで全治二週間の怪我を負うはずがない。
その診断書はきっと、お金を積むかなにかして医者に書かせたものなのだろう。
「その条件は飲めないと言ったんだが、先方が頑として譲らなかったんだ。話し合いが長期化することも覚悟して、いったん持ち越すことになったんだが、そのことを桜木に話したら『辞めます』と」
桜木くんは、これ以上会社を困らせたくなかったのだ。
だから自分から身を引いた。