クールな同期と熱愛はじめ
おそるおそるドアのノブを引く。すると鍵が掛かっておらず、あっさりと開いてしまった。
鼓動が嫌な音を立てる。
ゆっくり開けて中を覗き見て、目を見張った。
私の目の前に広がったのは、がらんどうの部屋。荷物がなにひとつない、すっからかんの状態。
予感が的中したのだ。
桜木くんがこの部屋にいないことは一目瞭然だった。
そこで思い出したことがある。一週間前、この部屋に来たときのことだ。
部屋の片隅に段ボールが置かれていたじゃないか。あれは、荷物を整理しようとしたわけじゃなく、引越しするためのものだったのだ。
どうしてあのときに、彼の考えに気づかなかったんだろう。
彼からもらった写真集を眺めて、呑気に設計のヒントなんか探していたんだろう。
桜木くん自身は、それどころじゃなかったのに。
踵を返し、私は今来たばかりの道を戻った。
電車に乗っている以外は駆け足。それほど気持ちが急いて仕方がなかった。
おかげで、オアシスに着いたときには、すぐにしゃべれるような状態ではなかった。
ドアを開けたところで立ち止まり、肩で大きく揺らして間宮さんを見つめる。