クールな同期と熱愛はじめ
Round8:熱愛宣言
あれから月日は流れ、桜木くんが私の前から姿を消してから三回目の秋がやってきた。
設計部での私は、次から次へと仕事が入り、毎日忙しくやっている。
おかげさまで、プラン設計が採用されることも多くなった。
それは、全く歯が立たなかった桜木くんがいなくなったからという部分も大いにあったけれど、それ以上に彼が私に残した“宇佐美は、そのまま真っ直ぐ突き進んでいけよ”という言葉が影響していたように思う。
私は私らしく。ただ、周りを冷静に見ることも忘れずに。
そうして三年間、夢中になって設計に携わってきた。
桜木くんのことを考えないようにするためというところもあったかもしれない。
ところがそんな思惑とは裏腹に、設計に行き詰ったときに思い出すのは彼のことだった。
桜木くんなら、こういうときにどうするだろう。
桜木くんだったら、この部分はどんな提案をするだろう。
そうやって、気づけば彼のことを思い浮かべている私がいた。
自宅へ帰れば、彼からもらった建築様式の写真集を眺め、桜木くんはどんな想いでこれを見ていたんだろうと思いを馳せる。
三年の歳月が流れても、彼の存在が薄れるどころか、不思議なことに色濃くなっていく。
どんなときでも顔が浮かんでくる桜木くんは、私の心の大部分を占めていた。