クールな同期と熱愛はじめ

他人の空似かとも思ったけれど、書かれていたプロフィールには確かに“桜木司”とあった。

“建築業界に新星現る”とキャプションの付いた記事が、見開き四ページに亘って掲載されていたのだ。

三年の月日がそうさせたのか、精悍さに磨きがかかったように見える。
自信に満ちた眼差しに射抜かれて、写真に過ぎないのに脈拍が乱れた。

現在は【星野設計事務所】にいることが書かれている。
記事によると、桜木くんが設計したのはコンサートや競技が開催可能のドーム型劇場らしい。このところテレビのニュースでよく話題になっている劇場だ。
まさか、それを桜木くんが設計していたとは思いもしなかった。

放心状態だった。
三年間も行方知らずだった桜木くんが、また私の前に姿を現したのだ。


「悠里さん、どうかしたんですか?」


岡田さんが顔をちょこんと覗かせる。


「ごめん、ちょっと出かけてくる」


デスク周りを軽く片づけて立ち上がった。

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