クールな同期と熱愛はじめ
「……ですよね」
彼の言っていることは間違っていない。
仕方ない。そのうちここを出入りする桜木くんに会える可能性に賭けるしかないか。
軽く頭を下げ、そこから離れようと背を向けたときだった。
「あの……」
守衛が私を呼び止めた。
振り返り彼を見る。
「お名前を伺えないでしょうか?」
「……名前って……私のですか?」
胸に手を当てて聞き返す。
すると守衛は「はい」と頷いた。
「宇佐美……宇佐美悠里ですが……」
私が答えると、彼の目に光が差したように見えた。
「少々お待ちください」
そう言われてしまえば、守衛がおもむろにそこから離れるのを黙って待つしかない。