クールな同期と熱愛はじめ
百メートルほど離れたプレハブの仮設事務所のようなところから出てきた彼は、ヘルメットを抱えていた。
私の元に戻ると、それを差し出す。
「これを被って中へお入りください」
「はい? いいんですか?」
念押しをすると、守衛は手をひらりと返して入口へと向けるだけだった。
なんとなく腑に落ちないものの、せっかく許可が出たのだから入ろう。
ヘルメットを被り、入口のドアを押した。
中へ入ると、すぐ目の前に鉄骨がまだむき出しの建物が現れる。三分の一ほどの完成度合に見えた。
鉄がぶつかるような音や機械音が響く中、ゆっくりと足を進める。
さすがに建物の中に入るのは躊躇われて、外から眺めることしかできない。
手持無沙汰にのろのろと歩き、建物の周りをぐるっと一周してきたときだった。
私の前方から歩いてくる人影が見えた。
ちょうど日差しの傾き具合で逆光になり、はっきりと姿を捕えることはできない。
手をかざして太陽を遮る。
目を細めて見ると、スーツ姿にヘルメットを被った男の人だった。
ドキンと鼓動が弾む。
――もしかして。