クールな同期と熱愛はじめ
「――な、なんなのよ!」
いくらなんでも、それは言い過ぎじゃないか。
センスがないことは、私だってわかっている。それでも家を造りたいから、お客様が喜ぶ顔を見たいから、頑張ってやってきたというのに。
握りしめた拳が震える。
「どうする? やる? やらない?」
きっと桜木くんは、私のことを絶対に好きにならない自信があるに違いない。だからこそ、そんな失礼なことを言えるのだ。
悔しさがさらに膨れ上がっていく。
そっちがその気なら……。
「やる」
思わず合意してしまった。
お腹の底から出たような低い声だった。それこそ、女子力とは程遠い声だろう。
「絶対に私のことを好きにさせてみせるから」
見事好きにさせた暁には、私の前で土下座をしてもらうのだ。
“ひどいことを言って傷つけて申し訳ありませんでした”と。
そしてその後、こっぴどく振るのだ。
“あなたのことは眼中にありません”と。
その女子力を引っ提げて、もっとイイ男をゲットするのだから。
「楽しみにしてるぞ、ウサコウ」
桜木くんがひらりと身を翻す。
「――ウ、ウサコウ!? 私はウサギじゃないからね!」
店内に戻っていった彼の背中に激しく言葉を投げつけた。