クールな同期と熱愛はじめ
Round3:たび重なる偶然
翌週の月曜日。
通勤電車で乗り合わせた胡桃は、「彼氏できた?」と挨拶より先に聞いてきた。
吊革を掴んで並んで立っていたものだから、前に座っていたサラリーマン風の人がチラッと私たちを見上げた。
私の返事を胡桃が目を見開いて待つ。
彼女の期待に添えない自分が情けない。
こともあろうか、売り言葉に買い言葉で桜木くんと変な戦いをやることになってしまった。
その話を聞かせると、胡桃は「えー面白そう」なんて目を輝かせた。
目の前のサラリーマンにいたっては、物珍しそうに私の顔を見ていた。
「だけどね、正直自信なんてないんだ」
「そうなの? ライバルなんて一番恋に落ちそうな相手だけどな」
胡桃が窓の外を流れる景色を見ながら口元に笑みを浮かべる。
ライバルはライバル。決して恋仲にはならないでしょ。
それ以前に、桜木くんが私のことをライバル視していないのがわかるから、これまた悔しい。虫けらとでも思っているはずだ。
「“嫌だ”っていう感情があるほど、それがひっくり返りやすい気がする。ちょっとでも相手のいいところを見たら、意外性で評価が一気に上がるから。“嫌い嫌いも好きのうち”ってよく言うでしょう?」