クールな同期と熱愛はじめ
「……わからなくもないけど、桜木くんの場合、それは当てはまらない」
女性のタイプも“これ”というポリシーがあって、そこから一ミリでもはみ出そうものなら、即好みから離脱させられそうだ。
そして私のことは絶対にタイプじゃない。
つまり、私は絶対に勝てない戦いに挑んでしまったというわけだ。
桜木くんは私のことが目障りだから、わざと挑発するようなことを言って私を罠に引っかけたに違いない。私が負けず嫌いだということを熟知しているからこそ。
私はその口車にうっかり乗せられて、設計部から異動することになる。
「……どうしよう、胡桃」
「どうしようって、今さら弱気になっても仕方ないでしょう? 頑張って桜木くんを振り向かせるしかない。悠里ならできる!」
その自信はなんなのだ。
胡桃は天使のように柔らかい笑みを浮かべた。
「あ、そうだ。悠里の話を聞いているうちに忘れるところだった」
胡桃が手をパーにして口元に手を当てる。
「ちょっと気になるお店を見つけたんだけど、今夜一緒にどうかな」
“デート”のお誘いだ。
もちろん快くうなずき、電車の揺れに身を任せた。