クールな同期と熱愛はじめ
◇◇◇
もう少しで退勤時間の五時半を迎えるというときだった。
私と越川さん、そして桜木くんの三名が竹中部長のデスクへと呼ばれた。先週のプランニング設計の面子だ。
「この案件をお願いしたい」
そう言って部長が私たち三人にそれぞれ手渡したのは、営業から回ってきたプランニング設計依頼書だった。
ざっと見たところ、“ペットと快適に暮らす家”を作ってほしいということみたいだ。
「越川と桜木は何件か実施設計を抱えて忙しいだろうが、なんとか頼むよ」
私くらいのものだ。現段階で実施設計を請け負っていないのは。
ふたりは「はい」と返事をすると、すぐに自分のデスクへと戻っていった。
ペットと暮らす家か……。
今回もまた桜木くんに負けるかもしれない。
つい弱気な心が顔を覗かせる。
「宇佐美、期待してるぞ」
依頼書を持ったまま立ち尽くす私に、竹中部長が声を掛ける。