クールな同期と熱愛はじめ
呆気に取られる私を置き、ヒールの音を響かせて彼女が遠くなっていく。
桜木くんとふたりにされても……。
私も胡桃のあとを追おうと思ったそのときだった。
「ほら、帰るぞ」
桜木くんが歩きだしながら私に流し目を送ってよこす。
「でも」
「先に帰ってろって言われただろ。いくぞ」
断らせるつもりはないみたいだ。
もう一度、胡桃を振り返ると、とっくに姿は見えなくなっていた。
「おい、ウサコウ、早くしろ」
「だから、私はうさぎじゃないってば!」
弾みをつけて足を前に出し、桜木くんの隣に並んだ。
ふたりで帰るしかなさそうだ。どのみち一緒なのは駅までで、そこから先は別々になるだろう。
ところがその目論見は外れ、改札口を抜けても桜木くんが私と同じ進路を取る。