クールな同期と熱愛はじめ

呆気に取られる私を置き、ヒールの音を響かせて彼女が遠くなっていく。

桜木くんとふたりにされても……。
私も胡桃のあとを追おうと思ったそのときだった。


「ほら、帰るぞ」


桜木くんが歩きだしながら私に流し目を送ってよこす。


「でも」

「先に帰ってろって言われただろ。いくぞ」


断らせるつもりはないみたいだ。
もう一度、胡桃を振り返ると、とっくに姿は見えなくなっていた。


「おい、ウサコウ、早くしろ」

「だから、私はうさぎじゃないってば!」


弾みをつけて足を前に出し、桜木くんの隣に並んだ。
ふたりで帰るしかなさそうだ。どのみち一緒なのは駅までで、そこから先は別々になるだろう。

ところがその目論見は外れ、改札口を抜けても桜木くんが私と同じ進路を取る。

< 49 / 252 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop