クールな同期と熱愛はじめ
「バイバイ、桜木くん」
私が少し大きな声をだすと、彼は振り返って軽く手を振った。
とりあえず別れの挨拶さえ済ませてしまえば、あとはもういいだろう。
駅前のコンビニを過ぎ、いつものように家路を歩く。
桜木くんとの距離は、およそ二十メートル。
親指と人差し指で測ってみると、彼は五センチくらいの大きさになった。
私の住むマンションは駅を出て左折し、ひたすら真っ直ぐに七分ほど歩いた距離にある。あと残り二分弱。
ここまで来ても、私の前には桜木くんの姿があった。
彼の住む部屋はいったいどこなんだろう。
まさか、私と同じマンションなんてことは……ないと願いたい。
いや、この場合は願った方がいいのか……? あぁもう、わからない。
そうこうしているうちに私の住むマンションが見えてきた。
地上五階建ての鉄筋コンクリート。取り立てて変わったところのない、ごく普通のマンションだ。
1Kから1LDKの間取りのためか独身が多いようだけれど、一番上の階は間取りが2LDKまであるらしく、小さな子供を連れた若い夫婦をたまに見かけることもある。
ちなみに私の部屋は1DKだ。