クールな同期と熱愛はじめ
一オクターブも高い声が出てしまった。
「一ヶ月前に越してきた」
「一ヶ月前?」
今まで気づかなかったのはそのせいか。
私はここに住むようになって二年経っている。
同じような時間帯に出勤しているのに、その間一度も顔を合わせないのは不自然だ。
「信じらんねー」
桜木くんは片手を腰にあて、もう片方の手で顔を覆った。
「それはこっちのセリフ。私の方が先だったんだからね」
「早い者勝ちかよ」
指の隙間から私を睨むものだから、ぐっと言葉に詰まる。
「ともかく俺はいくから。おやすみ、ウサコウ」
「だから――あっ、ちょっと!」
素早くエレベーターに乗り込んだ桜木くんが、シースルーの扉の向こうで手を振る。
笑った顔が、どこか勝ち誇ったようだった。