クールな同期と熱愛はじめ
◇◇◇
『桜木くんとはどうだった?』
そんな電話が胡桃から入ったのは、私がちょうどお風呂から出たときのことだった。
「どうだったって、胡桃の方こそ忘れ物はあったの?」
スマホをスピーカーにして、急いでパジャマを着る。濡れた髪には、ひとまずタオルを巻いた。
『あれは嘘でした』
「え!?」
姿こそ見えないが、電話の向こうで胡桃がペロッと舌を出しているのが想像できた。
『桜木くんとふたりきりになれるようにしてあげたの』
「なにそれ」
『だって“落とす”にはお近づきにならなくちゃ』
胡桃は気を利かせて、私たちを先に帰らせたようだ。