クールな同期と熱愛はじめ

『見舞いに来てやったから、カギを開けてくれ』


誰が見舞いにだって?
さては私の聞き間違いか?

高熱に聴覚をやられた可能性もある。
黙っていると、桜木くんはもう一度『開けてくれ』と言った。


「……私の部屋?」

『他にどこがあるんだよ』


まぁ確かに。言っていることは間違えてはいない。

あの桜木くんが、私のお見舞いに?
いったいなんの魂胆があって。それとも天変地異の前触れか。


『早くしてくれ』


病人に早くしろはないじゃないか。


「無理だよ、起きられない。なにか買って来てくれたのなら、ドアにでもかけておいて」

『そんな物騒なことができるか』


なぜに私が怒られなくてはならない。むぅとひとり口を尖らせる。

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