クールな同期と熱愛はじめ
道路より高い位置にある店の前には階段が五段ほどあり、そこから離れた左サイドには、外壁に沿った形でスロープが設けられている。バリアフリーのためだろう。
――これだ。
ピンときた。
クルリと踵を返し、来た道を足早に戻る。カフェラテを飲んでいる場合じゃない。思い立ったら即行動だ。
社員証を取りに一旦部屋へ寄り、会社へと急いだ。
守衛さんに声をかけて中へ入れてもらうと、設計部へと足を速める。
エレベーターは動いていないから非常階段だ。さすがに七階まで駆け上がると息が苦しい。
鉄製の重い扉を開け到着すると、呼吸を整えながら設計部のドアを開ける。すると消えているはずの電気が点いていることに気づいた。
誰かいるの?
足を踏み入れてすぐに、それが誰なのか判明する。桜木くんだった。
私に気づいた彼が顔を上げる。桜木くんは目を丸くした。
「もう大丈夫なの?」
「ああ。この前は悪かったな」
声も元通りだ。