部長が彼になる5秒前
Ⅰ 再会

オフィスの窓から見える景色。
お気に入りペンケースの中身。
駅からビルへと歩き出すパンプスと、揺れる髪留め。


いつもの日常のようで、どこか少し違う。
それだけのことで、いつもより少しだけ新鮮な空気を感じられる。



私、佐野 朱里(さの あかり) は、
入社して5度目の春を迎えた。



春は季節の中で一番好きだ。
花は咲き、それを眺めながら新しい環境へ飛び込む人々。

徐々に暖かさを増す風が、その後押しをするようで、不安と期待を、季節がマーブル模様にしてくれる雰囲気に心が惹かれる。



その新しい始まりと共に、靴やアクセサリーを新調し、新しく身にまとう物・空気が、自信を持たせてくれる。
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