部長が彼になる5秒前

率直に褒められ、安心する。
昨日、絢に付き合ってもらって買った甲斐があった。

と、昨夜の一コマを思い出していると、

「……あ。」

次に浮かんだのは、
部長と見知らぬ女性の光景で。
ズキンと胸が痛む。

恐らく表情にも出ていたのだろう。

「どうした?」
と部長は私を心配する。

昨日の夜、何してたんですか?
誰と居たんですか?
今すぐ、そう聞けたらいいのに。


「部長は、昨日の夜は……残業ですか?」

臆病な私は、こんな風にしか口に出来ない。

見ておきながら、遠回しに聞くなんて卑怯だなと自己嫌悪に陥る。
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