部長が彼になる5秒前
線香花火は切ない。
徐々にその中心を膨らませながら、やがて周りに花びらを散らすように、火花は激しく燃え上がる。
私の恋心と同じように。
ただ一つ違うのが。
「あ、」
私の線香花火の火が、ポトッと地面に落ちる。
その様子は、燃える様子と比べば、案外あっけないもので。
私は、自身の恋も、こうしてあっけなく終わってしまうのだろうかと不安になった。
その不安を紛らわせるかのように、部長の持つ線香花火の灯りを眺め、煙の匂いを少し吸い込んだ。
終わりが近い……。
このままずっと刻が止まってしまえばいい。
そう心で呟きながら、私は緊張で震える手を密かに握りしめた。