部長が彼になる5秒前
毎月、『Venus』に目を通す度、
忙しそうに取材へ向かう君を見かける度、
眩しいほどに、心が惹かれることも。
彼女を想い、必死に営業部の業績に貢献しようと努めた3年間の末。
再び、制作部長として彼女の直属の上司になる機会が巡ってきた。
どれほど自分が、この再会を望んでいたか。
もう次に彼女に会ってしまえば、自分がただの上司としては振る舞えないことくらい分かっている。
あの日、涙を流した彼女と離れてからの3年を思い出し、心が熱を帯びる。
また君と、『Venus』を共に生み出していけることを考えただけで、力が漲る。
……ただ同時に、彼女と一緒にしたいことなんて、それ以上で。
どれだけ、君を想っているかなんて、
君はまだ何も知らない。