部長が彼になる5秒前
約1年間、水瀬チーフに抱いていた
嫌われているんじゃないか、
自分は雑誌企画に向いてないのかもしれない、
もし何も力になれていなかったら、
という、自分の心にあった重圧が、
その一言で、すっと透明に軽くなって、
心の中に溶けて消えていった。
「ありがとうございます。頑張ります!」
「あぁ。……それと、
もう"チーフ"じゃないから。」
少し笑ってそう言って、水瀬チーフは、
エレベーターから降りていった。
認められた、その事実を知った私は、
1人残されたエレベーターで、
思わず泣いてしまった。
その時の、ほっとした気持ちと、
涙で滲んだ先にある、水瀬チーフの背中が
今も忘れられない。