部長が彼になる5秒前
しかし、肝心なのはここからだ。
私には、「部長をドキドキさせる」という
重大なミッションが課されている。
……気が重すぎる。
「はぁ…。自信ないな。」
とりあえず、のろのろとページをめくり、手帳のメモを確認する。
"後れ毛" "下の名前で呼ばれるとドキっとする"
"手を握る" "耳元で囁く"…
そこには、1ヶ月間、仮恋人として部長にドキドキさせられたことが綴ってあった。
これを真似するのが、実は1番手っ取り早いんじゃないだろうか。
「部長にドキドキさせられた分だけ、
朱里が部長をドキドキ仕返すのよ!」
別れ際、絢に言われた言葉を思い出す。
……絢の言う通りに、同じ方法で返すのが、やっぱり1番挑戦しやすい気がする。