along
何をしていても落ち着かない私も、いつもよりずいぶん早くベッドに入ったのだけど、まったく寝付けずひたすら祈りを捧げていた。
明日は直が先手番でありますように!
どこぞの神様に祈るにしても、「勝てますように」は願ってはいけないような気がして。
チェスや囲碁ほど大きな差はないけれど、将棋もやはり先手がいいと言われている。
中には後手番の勝率が高い人もいるけれど、それは少数で、直もやはり先手番の勝率の方が高い。
その先手後手を決めるのが振り駒で、記録係が上位の者(今回は日比野棋聖)の方の歩を五枚取って手の中で振って落とす。
五枚中、歩の枚数が多ければ日比野棋聖が先手、と金の枚数が多ければ直が先手となる。
第一局で日比野棋聖が先手となり、その後第四局までは順に先後を入れ替えて指してきた。
今回は最終第五局までもつれこんだため、最後は改めて振り駒が行われるのだ。
実力が拮抗していた場合は勝敗を左右するとも言われる振り駒。
今回のシリーズもすべて先手が勝っている。
直がどんなに努力しても振り駒だけはどうにもならない。
と金三枚、と金三枚、と金三枚、と金三枚…………後は直が自分で何とかするから、神様お願い! と金を三枚出してください!
願い事と寝返りを繰り返して、私は眠れない一晩を過ごした。