今宵の月のように
「俺は宮本宵(ミヤモトヨイ)、38歳だ」

彼――宮本さんが言った。

私よりも9歳年上なのか、そんな気は少しだけしていましたが。

「宮本さん、ですね」

そう返事をした私に、宮本さんはあくびをした。

「すまん、もう寝ていいか?」

そう聞いてきた宮本さんに、
「あ、はい…」

私は返事をした…って、どこで寝るんですか!?

宮本さんは両腕をあげて伸びをすると、ソファーのうえに寝転がった。

あっ、そうですよね…。

ソファーのうえで寝転がった宮本さんはグーッといびきをかいて寝てしまった。

ま、マジで寝たよ…。

もう少しだけいろいろと聞きたかったのに…。

「あ、残りの洗濯物を干さなくっちゃ…」

自分がやっていたことを思い出し、私はベランダを後にした。

満月の夜に突然始まった私と彼の同居生活がこれからどこへ転がって行くのか、この時はまだ知らなかった。
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