今宵の月のように
心の中で毒を吐いた後、またテーブルのうえに視線を向けた。

炊きたての白いご飯にたまご焼き、ホウレン草のみそ汁とたくあんがテーブルのうえに並んでいた。

「だから朝一番にスーパーに行って買ってきたんだよ。

炊飯器はなかったから土鍋で炊いたけど」

宮本さんはそう言うと、椅子に腰を下ろした。

「作ったんだから食べろ」

そう言って彼が促してきたので、私は椅子に腰を下ろした。

「いただきます」

こうして両手をあわせて朝ご飯を食べるのはいつ振りだろうか?

箸で茶碗の中のご飯をつまむと、口に入れた。

「…あ、美味しい」

炊きたてのご飯がこんなにも美味しいと思ったのは久しぶりだった。

「最初の“あ”は余計だろ」

宮本さんはかきこむようにしてご飯を食べると、箸でたまご焼きをつまんで口に入れた。
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