今宵の月のように
いや、それはないか…。

昨日初めて会った人が私の好きな食べ物がわかる訳がない。

そもそも、教えた覚えもない。

「俺もたった今帰ってきたばかりだったから、すぐにできるラーメンにしたんだよ。

早く食べないと伸びちまうぞ」

「あ、はい…」

カバンをソファーのうえに置くと、手を洗うために洗面所へと足を向かわせた。

椅子に腰を下ろすと、
「いただきます」

両手をあわせると、箸でラーメンを持ちあげた。

野菜とお肉がたくさん入ったしょう油ラーメンをすすると、
「美味しい」

思わず声が出てしまった。

「だろ?」

その声に視線を向けると、宮本さんが私の向かい側の椅子に座ってラーメンを食べていた。
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