今宵の月のように
「はーっ、極楽極楽」

休日の楽しみ方は寝ることとツナ缶をつまみにしてビールを飲むことである。

朝からビールが飲めると言うこのうえない幸せを感じながら、私はツナを口に入れた。

ゴクゴクとビールを飲んで喉を潤すと、
「…いつからこんなことをやってたんだっけか?」

私は呟いた。

カツンとビールを床のうえに置くと、空を見あげた。

空は青く晴れ渡り、雲は1つも見当たらなかった。

都会の華やかな生活に憧れて、周囲の反対を押し切って就職と同時に田舎の小さな町から上京してきた。

上京したての頃はドラマのような華やかな生活が送れるんだと思ってたのに、実際はどうなのだろう?

毎日のように仕事に追われ、休日は寝ることと朝からツナをつまみにビールを飲んでいると言う生活だ。

「全然違い過ぎるよ…」

青い空に向かって、私は呟いた。
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