今宵の月のように
「――い、おい!

おい、しっかりしろ!」

肩を揺すられ、聞き覚えのある声に閉じていた目を開けた。

いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

「おい、大丈夫か!?」

その声に視線を向けると、
「きゃっ!?」

私は驚いた。

「きゃっ、じゃねーだろ。

こんな暑い部屋でクーラーもかけずに寝て、熱中症で倒れたんじゃねーかと心配してたんだぞ」

そう言った宮本さんの顔はものすごく近くにあってビックリしてしまった。

「ね、熱中症って…」

それよりも、自分が宮本さんの腕の中にいることに気づいた。

「あ、あの…」

「水か?

すぐに持ってくるから」

「いや、そうじゃなくて…」

私は肩を抱いている宮本さんの手を指差すと、
「大丈夫なので、離してもらえませんか?」
と、言った。
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