今宵の月のように
そんな私に、
「仕事、辞めたらいいんじゃないか?」

宮本さんが言った。

「えっ?」

その答えに視線を向けると、
「仕事のせいで夢見ていた自分の生活ができないと言うならば、仕事を辞めればいい。

大学卒業してからずっと働いてたんだろう?

退職金くらい出してくれるだろ」

宮本さんは言った。

「でも仕事は…」

「自分の気が済むまで楽しんだと思ったら、次の就職先を探せばいい。

仕事は1つじゃないんだ、すぐに見つけようと思えば見つけられる」

私の言葉をさえぎるように、宮本さんが言った。

宮本さんはポンと私の頭のうえに手を置くと、
「人生はまだこれからだ。

お前はまだ若いんだ、これから憧れていた都会生活を楽しめばいい」
と、言った。
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