今宵の月のように
「お、お帰りなさい…」

そう返事をした私は、ちゃんと言えただろうか?

「おっ、いい匂いだな」

宮本さんがリビングにやってきた。

「今日はピーマンの肉巻きを作ったんです。

宮本さんはピーマンは大丈夫ですか?

好き嫌いが多い野菜だと聞きますので」

そう言った私に、
「俺は好きだよ」

宮本さんは答えると、椅子に腰を下ろした。

――ああ、そろそろだな

先ほどのあの人相の悪い男は一体、誰なのだろうか?

しかも“そろそろ”とか“決戦”って、一体何の話をしているの?

「いただきます」

両手をあわせた宮本さんは、箸でピーマンの肉巻きをつまんで口に入れた。

「うん、美味い!」

「よかったです」

やっぱり、宮本さんの正体はもしかして…?

先ほどの出来事に、私はそう思わずにいられなかった。
< 62 / 105 >

この作品をシェア

pagetop