今宵の月のように
謝られた理由がわからなかった。

「やっぱり、宮本さんは…」

「今は教えられない」

私の言葉をさえぎるように、宮本さんが言った。

「“今は”って…?」

じゃあ、いつになったら教えてくれるって言うの?

「教えたら、お前に迷惑がかかる」

そう言った宮本さんに、
「迷惑って…」

私は訳がわからなかった。

一体、彼は何の話をしているのだろう?

「今はどうしても、果たさないといけないことがあるんだ。

それが終わったら俺のことをちゃんと教える。

だから、今だけは待っててくれ」

「待っててって、どれだけ待てばいいの…?」

「それは、俺にもわからない。

だけど、とにかく今は待っててくれ。

この通りだ」

宮本さんは頭を下げてきた。
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