今宵の月のように
「…だから、私に帰ってきたら“おかえり”と言って欲しいんですか?」

そう聞いた私に、
「うん、言って欲しい」

宮本さんは首を縦に振ってうなずいた。

「全てが終わって、私が“おかえり”と言ったら、何もかもを教えてくれるんですか?」

私は、何を言っているのだろう?

もしかしたら、宮本さんはテロリスト集団の1人かも知れないのに。

彼が帰ってきた時に口止めで殺されてしまうかも知れないのに。

なのに、何で彼と約束を交わそうとしているのだろう…。

「ああ、お前が知りたいことを何もかも全て教える。

だから…全てが終わって、俺が帰ってくるのを待っていて欲しい」

宮本さんの手が私の頬に触れる。

「――ちゃんと、待っていてくれるな?

こより」

名前を呼んだその声は、静かに耳の中へと入って行った。
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