今宵の月のように
心臓が、ドキドキ…と鳴っている。

自分の名前のはずなのに、どうしてなのだろう?

何でこんなにもドキドキしているのだろう?

ねえ、どうしてなの?

「こより、返事は?」

何も言わない私を不思議に思った彼が声をかけてきた。

「――ッ、はい…」

首を縦に振ってうなずいて、私は返事をした。

宮本さんはフッと笑うと、
「いい子だ」

そう言って私の髪の毛の中に自分の手を入れてきた。

いつも近くで見ていた骨張った大きな手が、私の髪の中に入っている。

「えっ、あの…」

これ以上動かないように後頭部を固定すると、宮本さんの顔が近づいてきた。

まさか、もしかして…!?

いや、もしかしなくてもこれは…!?
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