今宵の月のように
「――宮本、さん…」

呟くように名前を呼んだ私に宮本さんは笑うと、後頭部を押さえていた手を離した。

サラリと髪を伝って抜けたその手に、私は名残惜しさを感じた。

「風呂に入ってくる。

先に寝てもいいぞ」

宮本さんはそう言うと、腰をあげてバスルームの方へと足を向かわせた。

ガチャッ…

バスルームのドアが閉まって、シャワーの流れる音が耳に入ってきた。

――その時は、俺に“おかえり”と言って迎えて欲しい

先ほど言った宮本さんの言葉が頭の中でリピートされて、それを閉じ込めるように両手で耳をふさいだ。

キスされて、わかった。

自分の気持ちに、気づいてしまった。

――私は、宮本さんが好きなんだ…と。
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