今宵の月のように
夢を見た。

私と宮本さんが一緒にいて、一緒に笑っている夢だった。

とても幸せで、温かい夢だと私は思った。

夢の中の私は宮本さんが好きで、宮本さんも私のことが好き。

好きだから一緒にいて、一緒に笑っている。

でも…夢の中の私は、宮本さんの正体に気づいているの?

宮本さんが何者かと言うことがわかったから、笑っているの?

よくわからないけれど、お互いがお互いのことを好きなのは確かなことだと思った。

「――こより…」

宮本さんの唇が動いて、音を発して、私の名前を呼んだ。

それに対して私は唇を開いて、彼の名前を呼ぼうとした…けれど、声が出なかった。

どうして?

何で?

私が名前を呼んでくれないことに、宮本さんは悲しい顔をした。

待って…!

今すぐに呼ぶから、待って…!
< 75 / 105 >

この作品をシェア

pagetop