今宵の月のように
今ここで彼と同じ月を見ているのだと、私は思った。

こんなにも近くにいて、同じことをしているのに、距離が遠いと思うのは、先ほどの夢の影響からなのだろうか?

名前を呼びたかったのに、呼ぶことができなかった。

それは、宮本さんが何も教えてくれないから?

それとも…私はまだ、彼を怖がっている部分があるからなのだろうか?

「何とか片づくといいな」

宮本さんが呟いた。

“片づく”って何が?

何を指差して、“片づく”って言ってるの?

そう聞きたいけど、彼のことだからまたごまかしてくるかも知れない。

だから、もう受け入れるしかないのだろう。

「宮本さん」

私は、彼の名前を呼んだ。

「何だ?」

宮本さんが三日月から、私の方に視線を向けてきた。
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