今宵の月のように
「わっ、何だこれは!?」

彼が驚いたように声をあげたので何事かと思ったら、
「あっ…」

私は自分の部屋が散らかり放題だったことを思い出した。

脱ぎ捨てた何日か前の服に、あちこちに転がっているビールとチューハイの空き缶、空っぽのコンビニ弁当にチョコレートの空き箱とスナック菓子の袋と、とにかく散らかり放題である。

この部屋の中で唯一キレイなのはベッドだけである。

帰ってすぐに寝るのが当たり前なため、ベッドのうえ“だけ”は常に清潔に保たれていると言うヤツである。

「あちゃー…」

しまった、掃除をするのを忘れていた。

と言うか、最後に掃除をしたのはいつだったのか自分でも覚えていない。

そんなことよりも、隣からただならぬ殺気が放出されていることに気づいた。

「あっ…」

そうだった、人を――って言っても、脅されてだけど――ここに連れてきたんだ。
< 8 / 105 >

この作品をシェア

pagetop