今宵の月のように
ドアを閉めて空を見あげると、月が出ていた。

「満月か…」

空には、銀色の満月が浮かんでいた。

「宮本さん、月を見てるかな…?」

煌々と輝いている満月を見ながら、私は呟いた。

私と宮本さんの関係が始まったのは、満月の夜だった。

半ば強引に彼が私の部屋に転がり込んできて、同居生活が始まったのだ。

今思うと、おかしな始まり方だ。

ぶっきらぼうでキレイ好きで…だけども意外にも面倒見がいい彼のことを、私は好きになったんだ。

そんなことを思いながら階段を下りてスーパーマーケットへと向かおうとしたら、
「――こより」

聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。

「――えっ…?」

一瞬、私の聞き間違いなんじゃないかと思った。

声のした方向へと、私は振り返った。
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