今宵の月のように
「あの人、あんな顔であんな頭だけど公務員だぞ?

去年の暮れに13歳下の嫁さんをもらったって聞いた時は、さすがの俺も驚いたけど。

あの“熊殺し”が…って、感じでさ」

「く、“熊殺し”ですか?」

何か恐ろしい…。

「素手でヒグマとケンカして勝ったから“熊殺し”らしい。

それに関しては本当かどうかはよくわかんねーけど」

「で、ですよね…」

「ああ、話がそれたな」

宮本さんはコホンと咳払いをした。

「2つ目は…本当に申し訳ない」

そう言った宮本さんが突然頭を下げてきた。

「えっ、あの…」

突然のことに戸惑っている私に、宮本さんは頭をあげた。

「仕事とは言え、黙ってて本当に申し訳なかった。

でも一般市民であるお前を巻き込みたくなかったから、ずっと黙ってたんだ」

宮本さんはそう言って悲しそうに目を細めた。
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