再会チョコレート
再会チョコレート


 バレンタイン。チョコ。

 それらの単語を耳にするとアイツの顔を思い出す。子供の頃よく遊んでた男子。彼はお母さんの親友の息子で、しょっちゅう私の家に来ていた。小学校では毎年同じクラスだった貝塚里来(かいづか・りく)。

 名字の一部を取って皆からカイと呼ばれていたので、私も彼をそう呼んだ。

「俺、バレンタインにチョコ食べないと死んじゃう病なんだよね〜」

 カイの口癖だった。

 冗談口調と深刻な顔で毎年そんなことを言うので、昔は信じてチョコをあげていた。死なれたら困る。さすがに小学校高学年にもなるとそんなのはウソだと分かり、なかばカイに呆れた。

「凛(りん)、チョコちょうだいよ。じゃなきゃホント死ぬからね?」

「はいはい。義理チョコ」

 そう言いながら、本当は頑張って手作りしたガトーショコラ。初めてまともにお菓子を作った小学六年のバレンタイン。

「やったー! ありがと! ケーキ屋みたいだな。凛すごい!」

「レシピ見れば誰だって作れるって。おおげさ」

「だって嬉しいもん!」

 いつまでも子供みたい。だけど、そんなカイの笑顔を見るのも嬉しかった。作ってよかった。
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