再会チョコレート
カイの新しい住所はもちろん知ってる。だけど気楽に訪ねられるほど近くじゃないし学校もある。それにこっちから行く理由が見当たらない。
それに、ユリの言う通り本当にカイが私のことを好きならあっちから会いに来てもいいはずだ。私の家はずっと同じ場所にあるんだから。なのに来なかった。それってそういうこと。
「恋とかないよ。私達の間には。ただの友達。以上」
「そうかなー?」
ユリは怪訝な顔。カイの話題になるといつもそうだ。
それは、正直なことを言うと少しは寂しかった。当たり前だ。たくさんいる男子の中で一番仲が良かったし、カイママが私のお母さんに会いに来ない日でもカイは毎日のように家へ来て私を外に連れ出した。
春には桜を見に。夏は水族館や海水浴へ。秋は紅葉の絵を描き、冬は寒空の下でホットチョコレートを飲んだ。
ユリともしょっちゅう遊んでたけど、それと比べものにならないほどカイとは一緒にいた。
カイと会えなくなった時、不思議な感じがした。引っ越しは何かの間違いで、そのうちまたひょっこり会いに来てくれるんじゃないかって。
けれど、そういう日は訪れず、バレンタインデーという行事をもてあまし、こうして感傷的になる始末。
私と同じ、カイだってもう子供じゃなくなってるはずだ。引っ越し先で新しい出会いもあっただろうし、もう高校生。私の知らない女子と恋愛してたっておかしくない。
中学生になってすぐ、念願のスマホを持たせてもらえるようになった。会いに行くのは無理でもメールや電話ならできるかもと期待した。でも、できなかった。
その頃、なぜか恋愛感情だと決めつけられそうで恥ずかしいなと感じ、お母さんに対して素直にカイの情報を訊けなくなってしまったんだ。カイがスマホを持ってるのかどうかも分からずじまい。