再会チョコレート
数日後、例年通りバレンタインデーは訪れた。
カイと離れて数年、この日はこんなにも無味乾燥だったっけと考える。子供の頃のバレンタインはもっと色鮮やかだった気がする。
ユリは他校の彼氏と約束があると言い、先に学校を出た。彼女の足取りの軽さがなぜかとてもうらやましかった。
一人ぼんやりと昇降口を後にすると、
「1年の凛ちゃんだよねー?」
「はい、そうですけど……」
知らない上級生男子に待ち伏せされていた。ネクタイの色からして3年生? 女の扱いに慣れてそうなチャラい人だった。
「あのさー、俺と付き合ってくれない?」
「はい?」
「今日バレンタインだから、はい。チョコあげる」
「私にですか?」
「モチのロン!」
うわー。こういうノリ苦手ー。ゾワゾワする。
それに、チョコって女子から渡すものなんじゃ……。しかもこれ有名ブランドのチョコ。ガッツリ本命用じゃん。この人これ一人で買いに行ったの?
引き気味な私に気付いているのかいないのか、謎の本命チョコを手にした先輩は私の肩に手を回そうとしてきた。
「前から可愛いと思ってたんだよねー。文化祭の時のメイド喫茶の衣装、可愛かったよー。だから付き合おうよ。退屈させないからさっ」
「ちょっ、何するんですかっ」
寒気フルマックス。先輩の手が肩に触れそうになった時、誰かに強く左腕を引かれた。驚いたけど、おかげで先輩の魔手から逃れられた。
「すいません、ありがとうございますっ」
救ってくれた人を見て、全身の血がワッと沸騰するように熱くなる。
「カイ……?」