再会チョコレート
想像を超えて男っぽくなったカイに、うまく声をかけられない。
もう彼女がいるかもしれない昔の男友達にこんな気持ちを抱くなんて間違ってるのに。
寂しいような嬉しいような。驚きと緊張の連続で自分の気持ちがつかめない。
カイは肩越しに私を振り返る。
「ずっと待ってたのに。凛のチョコ。3年間も我慢してひん死状態なんだけど」
「……っ!」
そんな顔するなんてズルい。どうしてそんなねだり方をするの? 昔みたいに子供っぽい言い方は?
カイの瞳はいたずらに揺れ、爽やかな色気が漂う。記憶より背も高くなって、肩幅も広い。胸の奥がキュンとなる。
「は? 先約も何も凛ちゃんは彼氏いないでしょ。そういう情報聞いたから来たんだけど」
先輩は苛立ちをあらわにした。
「その情報間違ってはないでしょうけど今すぐ更新しといて下さい。凛は俺のだから」
「何だよそれっ」
一人ご立腹な先輩を無視し、カイは私の手を取り走り出した。
「ちょっとカイ、どこ行くの?」
「迷惑な先輩から助けてあげたんだから、お礼にチョコちょうだいよ」
「それは別にいいけど、それより訊きたいことがっ」
カイの足は通学路を外れ繁華街へと進んでいく。強く握られた手にカイの体温が伝わってくる。何年ぶりだろう。あたたかくて頼もしくて幸せな感触。
昔もよく手をつないで走ってたのに、その時は感じなかった気持ちがどんどん生まれてくる。ううん、これはもともと知ってた感情。言葉にする方法を知らなかっただけだ。
されるがままカイに従った。