残された時間
「幸助、あたしお父さんの所行って来るから、
あんたも適当に帰りなさいよ。」
そう言って病室を後にした。
二人になった病室では、沈黙が続いた。
沈黙に耐えられなくなったのか、
沈黙を破ったのは幸助だった。
「愛子・・はさ。」
『ん?何。』
「愛子も、俺と同じ年なんだろ?
友達とか見舞い、来ないの?」
『・・・友達。
あたし、友達なんていないよ。
って言うより、いらない。』
驚いたような顔であたしの顔を覗き込む幸助。
『友達なんて結局裏切られるだけ。
友情なんて、嘘のかたまりよ。
でも、今日は友達が出来た。
いつか裏切られるかもしれないけどね。』
そう言って幸助の顔を見た。
幸助はきょとんとしていて、
俺?と呟いた。
『うん。
幸助と、理沙さん。』
「俺は・・・
裏切らない。
裏切らないから。」
まっすぐな目で、はっきりとあたしに言った。
その言葉が嬉しくて、自然に笑みが零れた。
『ありがと。』
「愛子、もっと笑いなよ。」
急に言われて、あたしは目を見開く。
なんだか悔しくなって、
言い返した。
『どうして初対面の人にそんな事
言われなきゃいけないのよ。
あたしはいつでも笑いますよ。
幸助はもっと髪の毛切れば。
頭大きいのよ。』
ペラペラと話すあたしと同類で、
幸助も負け地と言い返す。
「頭大きいとか、ひでぇっ。
愛子はもっと笑えるんですか。
それなら大親友の僕の前で
もっともっと笑ってみせて下さいよ。」
べ。と舌を出しながら言い放った。
『誰が大親友ですか?
幸助、僕ってキャラじゃないでしょ?
気持ち悪い。
あぁ、もっともっともっともっと
笑ってあげるわよ。
それなら幸助はもっともっともっと
髪の毛短くしなさいよ。
幸助の頭が邪魔で
窓の外が見えないじゃないの。』
昔から口喧嘩だけは負けた事がないあたしは
見事幸助との争いに勝った。
「くっそ・・・」
幸助は悔しそうにしていた。