残された時間


「あ、俺そろそろ帰るな。」

そう言って席を立った。

『あ、そう。
じゃあね。』

寂しさを顔に出さないように、
手を振った。

「愛子、また来るからなっ。
メールか電話もしろよ。」

歯を出して笑い、
幸助は病室を出て行った。

幸助が出て行ってからすぐに、
看護婦と両親が入ってきた。

「愛子ちゃん、検査の時間よ。」

看護婦の後ろを両親は続いて歩く。
いつもは嫌な検査も、
今日だけは気分のいい状態で受ける事が出来た。

両親は、調子はどう?
だとか色々聞いてくる。
いちいち言い返すのも
めんどうなもので、あたしはほとんど無視をしていた。

「愛子ちゃん、何かいい事あったの?」

『あ、えみちゃんわかる?』

笑いながらえみちゃんに言った。
えみちゃんは、看護婦さんで、知らない間に
仲良くなっていた。

「えー。何があったの?
愛子ちゃんもいよいよ恋?」

『んー。
そんなとこかな。』

「へぇ。そっか。
愛子ちゃんも青春ね。
それじゃあ、検査終わったからそろそろ行くわね。」

『うん。』

えみちゃんは両親に軽く頭を下げて
病室を出て行った。
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