義理じゃないチョコ、あげます。
私、ちょっとくじけそうです。
バレンタイン、前日。
「ねえ、アキ」
「何?」
「今日、何の日か知ってる?」
「…バレンタイン、イブ?」
「違うよ!13日の金曜日!」
「え、そっち?」
だ、だって怖いじゃん…
何があるかわからないし。
「とか言ってさ」
アキがチラリとある場所を見つめる。
「あの、大量のチョコから目を逸らしたいだけでしょ」
「う…」
…そうなのだ。
ヒロの机の上には、数えきれないほどのチョコレート。
さらに手渡す子もいるだろうから、その数は尋常じゃない。
…うん。
わかってましたよ、それくらい。
「バレンタインに渡せないから今日、ね」
「うう、もう、わかってるから言わないで〜!」
ヒロがモテないはずないもん。
わかってたよ、頭では。
でも実際に目にすると、やっぱり辛いところがあるわけで。
「ヒロも、シュウくんも…すごいね」
なかなか直視はできない。
「…シュウのは、意外だったなあ」
「そうかな?シュウくんかっこいいし、わかる気がするけど」
喋ったことないときは、無愛想でちょっと怖かったけど。
喋ってみたらイメージと全然違って、嬉しかった記憶がある。