義理じゃないチョコ、あげます。
私、あの人が好きです。
翌日。
私は、アキと学校の体育館にいた。
試合前、ザワザワとする体育館の二階席。
ここからでは、ウォーミングアップする選手の姿は見えない。
なんだか、少しほっとしている。
「もう、カナ?」
「んー」
「ちゃんと作ってきた?」
「……アキがどうしてもって言うから」
…ヒロには、もう渡せないのに。
そう考えて、またため息が出た。
そんな私とは対照的に、アキは満足そうに頷く。
「よしよし。あたしが食べたいからね」
ヒロたちのはあたしのついで、なんて付け加えて。
本当はきっと、そんなんじゃないのに。
アキの優しさが、すごくありがたい。
「アキの、一番大きいのにしたからね」
「え、ほんと?さっすがカナ!」
「ふふ、でしょ?」
今は、まだ。
向き合う勇気はないから。
もう少しだけ、時間をください。
そう願って。
モヤモヤした気持ちに、蓋をした。