義理じゃないチョコ、あげます。
「アキ、私ちょっと飲み物買ってくるよ」
「了解。いってら〜」
そろそろ試合が始まる、という頃。
なんだか落ち着かなくて、席を立つ。
一階には自動販売機があるはずだから、飲み物を買って、一旦そこで落ち着こう。
そう思って階段を降りた。
どうして私は、こんなにタイミングが悪いのか。
一階では、ミーティングが終わったばかりなのか、バスケ部の人たちが集まっていて。
1人、また1人と、コートの方へ向かおうとしていた。
もちろん、そこには。
シュウくんと……ヒロもいた。
逃げても、もう遅い。
「…あ」
目が合ったのは、シュウくんだ。
今は、2人には会いたくなかったのに。
慌てて、自動販売機のある方の曲がり角に身を隠す。
でもシュウくんに見られたから、ヒロにもバレているかもしれない。
心臓の音が、やけに大きく聞こえる。
…逃げない方がよかったかも。
思いっきり避けてしまって、罪悪感が募る。
私が平然を装っていれば、なにもなかったことになるんだから。
普通に挨拶していれば、よかったかも。
考えても、逃げてしまったものは仕方ない。
どうか気づかずに行って…!!