義理じゃないチョコ、あげます。
人が、どんどん歩いていく気配がする。
こちらへくるような足音はない。
ほとんどの人がいなくなって、足音がまばらになって。
音が消えて、ほっとしたのはつかの間。
「あ、おいヒロ。どこ行くんだよ」
そんなシュウくんの声が聞こえて。
ビクリと、肩を震わせたとき。
「…見つけた」
思ったよりも穏やかな、大好きな顔がそこにあった。
「ヒロ…なんで…」
「んー…カナがそこにいる気がしたから?」
そう、ヘラリと笑う。
…そんなわけ、ないのに。
「…嘘ばっかり」
目を合わせずに言うと、ヒロは少し困った顔をする。
ああ、また、こんな態度。
私は本当に可愛くない。
ヒロに嫌われたって文句も言えない。
なのに。
ヒロは、すぐに普通の顔に戻って、気づかないふりをしてくれる。
「あーバレた?」
なんでもない風に。
私を笑わせようとしてくれてる。
「…普通わかるよ」
「ははっ!うん、ほんとはさ。シュウがこっちの方チラチラ見てたから。カナじゃねえかなって」
…シュウくんのバカヤロウ。
大事なときにわかりやすすぎるんだから。