義理じゃないチョコ、あげます。
な、何その顔…?
思っていた表情と違って、焦る。
つられて赤くなる私に気づかずに、目を逸らしたままのヒロ。
それから、チラリと横目で私を見る。
「…試合中」
ヒロの声に、胸がドキ、と鳴る。
「カナの声が聞こえて、嬉しかった」
ゆっくり、同じ歩幅で歩きながら、ヒロが話し出す。
「最後頑張れたのは、カナのおかげ」
「…いや、それは」
「言い過ぎじゃない。あれで気合い入ったから」
サンキューな、と呟く。
「バスケしてるときは、ずっと夢中だったけどさ」
「うん。すっごい楽しそうだった」
「はは、そうか?…でも。休憩になるたびに、カナの声思い出して」
「…」
ヒロは一度言葉を切ると、軽く頭をかく。
「……そしたら、…ずっと」
小さく息を吸ったヒロ。
私は、そんなヒロから目を離せない。
自分の心臓の音が、何よりも大きく聞こえたとき。
ヒロは、頬をほんのり赤くさせて。
「お前のこと、考えてた」
そう、ぽつりと呟いた。